聞かず嫌いを聞いてみるのブログ

聞いてみようと思いながらも、なんか聞く気が起きないなというアルバムを真剣に聞いてみるブログです

The Drums - Summertime!

 さて、The Drums 『Summertime!』について。

 HMVのレビューでは"ど真ん中のサーフ・サウンドで"とか"フレッシュなメロディー、若さイッパイの疾走感"とか書かれている。歌詞もサーフィンに行きたいよーとか言っていたりするんだけど、僕にはこれがそんな風には聞こえない。これのどこがサーフ・サウンドなんだろう。どこに疾走感があるの?やったことはないけれど、サーフィンはこんな単調なビートで表現されるスポーツではないでしょう。

 単調なドラムとベースの上に、ギターとか電子音とか口笛とかがちょこんと乗っかり、その中を不安定でかつ美しいボーカルが漂う。そうやってこのEPで歌われているのは過ぎてしまった美しい青春に対する後悔と喪失感だ。

 大人になった人間が自分の10代を振り返るように、どこか冷静な人間がある10代の少年の行動について話をする。I wannaとかI don'tとか時制は現在型の形をとる。母親に対してサーフィンに行きたいといっているのは今の自分ではなく、今の自分はすでにいつでも好きにサーフィンに行けるようになってしまっている。すでに過ぎ去ってしまった恋人にI'll never let you goと語りかけている。すべてを過去だとして読むと曲調と歌詞の意味が見事なまでに溶け合っていく。

 過ぎてしまったものには拭い切れないほどに後悔がこびりついており、だからこそすべてが美しい。これは、そんなEP。アルバム買わなきゃ。

Drums

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